いちごいちえ




どれくらい時間が経っただろう。


時々いつもと変わらない会話を交わしながら、結構な時間が過ぎたようだ。



変わり映えしない高速の景色に、時々間から覗く景色。



そのどれもが、段々と風景から山や田畑を消していく。



「ちょっと休憩するか」



そんな中、瑠衣斗の声に振り返る。


ずっと運転しているのにも関わらず、疲れを顔に出さないのか、出発した時と表情は変わらない。



「うん。そろそろお昼だし、ご飯でも食べる?」



「お、そうだな」



私も免許は持っているものの、瑠衣斗の大きな車を運転する自信なんてない。


それどころか、ペーパードライバーなので、運転に関しては初心者マークだ。



すぐにサービスエリアが現れると、徐々にスピードを落としたまま車が滑り込む。



お盆の時期とも言う事もあって、結構な賑わいと言う事がすぐ伺える。



「わ〜…すげえ人間」



「ちょうどお昼時だしね…」




圧巻されるような人混みに、車の数。


夏の暑い日差しのせいか、熱気までもが離れていても伝わってくるようだ。



適当に開いていた駐車場のスペースに、瑠衣斗が手際よく車を止める。


綺麗な建物からして、まだ新しい様子が伺え、こじんまりとした広場が見える。



犬を連れて散歩をする人達も結構居て、ほのぼのとしたお昼時と言う感じだ。



「中で何か買って、外で食うか」



「そうだね。祐二さんにもらったご飯もあるし」



中身は分からないが、結構なボリュームがあるようだ。


手提げカバンを持ち上げてみると、瑠衣斗がそれを受け取る。


上からそれを覗き込むと、納得したように私に顔を向けた。



「足りねえ。やっぱ他に買い足しに行こう」



ここでもやっぱり食欲旺盛な瑠衣斗に、笑いが漏れた。
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