いちごいちえ
ももちゃんを外で待たせながら、人混みへ紛れる。
あっと言う間に飲み込まれてしまい、すぐに私は人の波に埋もれてしまう。
想像以上の人の数に、瑠衣斗の背中を見失いそうになる。
「あ…るぅ待って」
「…もも?」
繋がれた手を、瑠衣斗がぐっと引き寄せる。
そのまま倒れ込むようにして引き寄せられた私は、すっぽりと瑠衣斗の腕の中に収まってしまった。
「くっついてろ」
「えっ、う…うん」
そこまでしなくても…と口を開き掛けて、大人しく口を閉じる。
この人混みのせいにして、瑠衣斗にくっついていれる事が、恥ずかしながらも嬉しく感じる。
開けたスペースに辿り着くと、ようやく瑠衣斗から解放された。
「本当にちっせえよなあ。ももが潰されそうで怖くなる」
そう言う瑠衣斗は、なんだか楽しそうで。
嫌味も感じないその言葉に、私も自然と笑う事ができた。
人混みのせいにして、こうしてるぅにくっつけるのなら、私にとっては人混みも嬉しいハプニングになるの。
力強い腕と、広い胸に守られながら、私はるぅを思う。
「早く買って、ももちゃん迎えに行かなきゃ」
「そうだな。少し散歩させて、息抜きもさせてやんねーと」
簡単に買い物を済ませ、再び人混みで瑠衣斗に守られながら抜け出し、ももちゃんの元へと戻る。
大きなももちゃんが珍しいのか、ももちゃんの周りにはちょっとしたオーディエンスができあがっており、そんな光景に2人で顔を見合わせた。
「今は小型犬が人気だから…珍しいのかな」
「…多分。と、とにかく早くももを連れてくぞ」
私達が近付くと、尻尾を振って嬉しそうにするももちゃんを連れて、沢山の視線から逃れるようにして人混みから離れた。