いちごいちえ
「人気者だな、ももは」
悠々と前方を闊歩するももちゃんの後に続きながら、瑠衣斗と並んで歩く。
人混みが苦手な田舎っ子の瑠衣斗からすれば、一刻も早く抜け出したい状況だっただろう。
しみじみとそう言った瑠衣斗に対し、私は笑いが込み上げてくるのを噛み殺した。
「あと少しかあ…なんかあっという間だな」
「そうだね。あんまり帰るって実感ないなあ」
行く時に寄ったサービスエリアよりは小さいが、きちんと設備が整った様子に休めるスペースも設けられている。
ピクニックのように、芝生に座って日に当たる人達や、犬を連れて散歩をする人達がパラパラと居るようだ。
木のすぐ脇のスペースに設置されたベンチに腰を下ろすと、一息着く。
青々とした葉を付けた枝を広げ、適度に日陰を作る。
ザアザアと風が木々を揺らし、涼しさを運んでくれるようだ。
「ひとまず腹ごしらえだな」
「また沢山買ったねー」
ガサガサとビニール袋から買った物を取り出しながら、瑠衣斗がキョトンとした顔をして私を見る。
その顔がなんだか可愛く思えて、胸がキュンとときめいてしまう。
「…そうか?いつもと変わらないけど」
「ま、そうだけど!!相変わらず凄いなあって」
今まで当たり前だったやり取りが、今はなんだか新鮮に感じる。
それはきっと、想いが通じたから。
だからこそ、いつものような変わりないやり取りさえも、変わってないからこそ嬉しく感じる。
そんな事を思いながら、祐二さんからもらった手提げカバンから、アルミホイルに包まれた物を取り出す。
「多分サンドイッチだ」
「サンドイッチ?」
瑠衣斗に言われて包みを開けると、言われた通り、美味しそうなサンドイッチが包まれていた。