いちごいちえ
「…なに?緊張してんの?」
「しっ、してないよ」
「…ふーん」
思わず弾かれるようにして見上げた瑠衣斗が、意味深に口角を上げて微笑む。
なんだか意地悪そうなその顔に、内心ギクリとする。
あ、あれ?
なんか……。
「俺は余裕ないけど?」
「なっ…え」
妖艶な表情とは不釣り合いなセリフに、顔がカッと熱くなる。
私の表情を見ていた瑠衣斗が、クスクスと小さく笑う。
なんだかものすごく余裕な態度に見えて、余計に顔が熱くなる。
私はこんなに必死なのに〜!!
こんなに恥ずかしいのに〜!!
「るぅの嘘つきっ」
「嘘つき?俺がいつ嘘ついた?」
一枚も二枚も上手な瑠衣斗に、すぐに言葉に詰まってしまう。
うまく言葉の出ない私は、喉に言葉が張り付いたようで、結局口ごもるしかないんだ。
なんだか瑠衣斗に遊ばれているようで、無駄に悔しくもなってしまう。
「全然余裕なクセに…」
思った事がポツリと口から弱々しく飛び出て、そのまま俯き加減に目を伏せた。
私はこんなに必死でいっぱいいっぱいなのに、るぅは全然余裕なんだもん。
やっぱり私が、恋愛経験が少ないから?子供っぽすぎるのかな?
「余裕あるように見えるか?」
すっかり気分も落ちてしまって、顔を上げる事ができないでいると、頭上から瑠衣斗の優しい声が降ってきた。