いちごいちえ
お腹も満たされ、眩しい光が強くなる。
山の気候とも言えども、夏の日差しにじりじりと肌が焼けるようだ。
「ちょっとももと散歩して、出発するか」
「だね。のんびりし過ぎても、帰り遅くなっちゃうもんね」
そこまで広くはないが、こうして少し息抜きに散歩するには十分な広さだ。
私達と同じように散歩をする人達や、ピクニックのようにお昼を取る人達。
様々な人々が、それぞれ様々に過ごしている。
「ももがこっち来るの、初めてだなあ」
「そうなの?じゃあ環境変わったりして体調崩したりしないかな?」
「ん〜…以外とコイツ、図太いから平気そうだけどな」
自分の事を話されているなんて気付かないように、ももちゃんが尻尾を振ってのんびりと歩く。
ちょっと心配ではあるけども、すぐ傍には瑠衣斗やおじさんもおばさんも居るし、大丈夫かな、なんて思った。
引かれるように優しく繋がれた手に、キュッと力を込めた。
それに応えるように、瑠衣斗が優しく握り返してくれる。
ほっこりした気分にまどろみながら、反面帰る事への切なさが衝突するようだ。
ある程度散歩をすると、また再び車に乗り込む。
シートベルトを掛け、前に向き直った時に、ふと視線を感じて向き直った。
「…ん?どうかした?」
「う〜ん…ちょっといいか」
「え?な…」
身を乗り出してきた瑠衣斗が、優しく唇を重ねる。
驚く間もなく、軽く触れ合ったと思うと、そっと離れた。
「補給」
そう言って妖艶に笑って見せた瑠衣斗に対して、私は真っ赤になって目を泳がせた。