いちごいちえ
「ももが家で待っててくれるなら、俺も早く帰りたくなるだろうなあ」
「…え?」
ポツリと言った瑠衣斗に、目が丸くなる。
そんな私の小さな声に対してか、そうではないのか、瑠衣斗が口元を緩めた。
思ってもみなかった言葉に、胸が高鳴る。
それと同時に、冷たくさえ感じたこの街でも、なんだか暖かくさえ見えた。
「ん〜…どうしようか。ももが居るから〜ペット可の所だな。ドッグカフェとか」
「ドッグカフェ?ちょー行きたい!!」
「そうか。じゃ、決定だな」
瑠衣斗の言葉が気になってはいたが、深い意味はないだろうと考えないようにした。
1人で浮かれてしまっても、なんだか虚しい気もするし……。
慣れたハンドルさばきで、瑠衣斗が沢山の車の中を走らせる。
比較的駅前のビル群に近い場所のパーキングに車を停めると、エンジンを切った。
「もも連れて歩くと目立つだろうな」
「ね。るぅ人混みダメだもんね」
「うん、まあ…だから競歩で行くぞ」
「なにそれ」
瑠衣斗が真面目な顔をして言うものだから、思わず笑ってしまう。
そんな私を見た瑠衣斗が、コツンと優しく額を弾く。
そして、ふわりと笑った。
「もものツボ、分かんねー」
分かって言ってるなら、それはるぅじゃないよ。
なんて言わないけど。
瑠衣斗がそばに居てくれるなら、私は笑えるから。
「ほら、行くぞ」
そして私は、瑠衣斗に言われるがままに車を降りた。