いちごいちえ




店内に入ると、他にも何人かお客さんが居て、自分たちの犬と共に会話や食事を楽しんでいる。


お店では、犬用の服や可愛らしいリード、おやつやこまごまとした物まで売っているようだ。



「やばい!!可愛い!!」



どれを取っても、全てが可愛くて仕方がない。


席に着く以前に、私はももちゃんを着せ替え人形の如くいろいろな物を当てていく。


大人しくされるがままになっているももちゃんに、胸がキュンキュンしてヒートアップしそうだった。



「…もも?とりあえず席に着こうか?」



「え?あっ…ごめん」



「いや、構わないんだけど…」



思わず夢中になってしまった私に対して、瑠衣斗がクスクスと笑う。


本来の目的も忘れてしまう程、私は夢中になっていたようだ。



いつの間にか傍らで見守っていた店員さんに席を案内されながら、私はやっぱり恥ずかしさに赤くなって俯いた。


ふかふかのソファー席に通され、瑠衣斗と向き合って座る。


清潔感のあるサッパリとした女性の店員さんが、メニューを開きながら少し説明をすると、爽やかな笑顔を残して立ち去っていく。



「こーゆう所初めてだけど、料理もきちんとしてるみたいだな」



「ホント、全部美味しそ……あっ、プリン!!」



「はいはい。だからメインからな」



犬用のメニューですら、人と変わらない見栄えで、その中から瑠衣斗が適当にチョイスする。


私も瑠衣斗もメニューが決まると、瑠衣斗が店員さんを呼んだ。




料理が運ばれて来るまでの間、ももちゃんはやたらと他のお客さんの犬達に、とても大人気だった。


それでもおっとりマイペースなももちゃんは、きっと兄貴肌なのだろう。


時折、お客さんや店員さんに話し掛けられながらも、穏やかな時間が流れていた。
< 117 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop