いちごいちえ
店内に入ると、他にも何人かお客さんが居て、自分たちの犬と共に会話や食事を楽しんでいる。
お店では、犬用の服や可愛らしいリード、おやつやこまごまとした物まで売っているようだ。
「やばい!!可愛い!!」
どれを取っても、全てが可愛くて仕方がない。
席に着く以前に、私はももちゃんを着せ替え人形の如くいろいろな物を当てていく。
大人しくされるがままになっているももちゃんに、胸がキュンキュンしてヒートアップしそうだった。
「…もも?とりあえず席に着こうか?」
「え?あっ…ごめん」
「いや、構わないんだけど…」
思わず夢中になってしまった私に対して、瑠衣斗がクスクスと笑う。
本来の目的も忘れてしまう程、私は夢中になっていたようだ。
いつの間にか傍らで見守っていた店員さんに席を案内されながら、私はやっぱり恥ずかしさに赤くなって俯いた。
ふかふかのソファー席に通され、瑠衣斗と向き合って座る。
清潔感のあるサッパリとした女性の店員さんが、メニューを開きながら少し説明をすると、爽やかな笑顔を残して立ち去っていく。
「こーゆう所初めてだけど、料理もきちんとしてるみたいだな」
「ホント、全部美味しそ……あっ、プリン!!」
「はいはい。だからメインからな」
犬用のメニューですら、人と変わらない見栄えで、その中から瑠衣斗が適当にチョイスする。
私も瑠衣斗もメニューが決まると、瑠衣斗が店員さんを呼んだ。
料理が運ばれて来るまでの間、ももちゃんはやたらと他のお客さんの犬達に、とても大人気だった。
それでもおっとりマイペースなももちゃんは、きっと兄貴肌なのだろう。
時折、お客さんや店員さんに話し掛けられながらも、穏やかな時間が流れていた。