いちごいちえ
頼んだ料理が運ばれてくると、私は再びその可愛さに感激する。
犬の顔をしたハンバーグ。
お皿までもが、肉球の絵柄や形、どれを取っても犬好きにはたまらないだろう。
「どうしよ…食べれない」
「胃に入れば同じだろう」
「だって可愛すぎる!!」
ももちゃん用に用意されたご飯でさえも、可愛くて目を奪われてしまう。
だがそれを、ももちゃんは何の容赦もなくかぶりつく。
あっ…って、ももちゃんには関係ないよね。こーゆうの……。
「ももの飯にまでときめくな」
「だって…可愛い…」
「…お前のが可愛いって。ほれ、食うぞ。いただきまーす」
…えっ?
驚いて顔を上げると、私と同じ犬顔をしたハンバーグに箸を入れて形を崩している瑠衣斗が目に入る。
心なしか顔が赤い瑠衣斗に、つられるようにして顔が熱くなった。
「い、いただきます…」
トクントクンと脈打つ鼓動が、こめかみにまで響く。
恐る恐る箸をハンバーグに入れて、小さくしたカケラを口に運んだ。
しっかりと味わいたいのに、味なんて分かる物ではない程、そんな言葉に意識を全て瑠衣斗に奪われたようだ。
「なかなかうまいな」
「うん、そうだね」
本当は味なんか分かんないけど、瑠衣斗の言葉に頷く。
そんな中でも、小さな幸せに胸が暖かくなった。