いちごいちえ
瑠衣斗とこんな場所に来るなんて、正直思ってもみなかった。
それに、ももちゃんが居るなら、尚更お店なんて限定されてしまう。
「なんか、るぅがこんなお店に居るって…変な感じ」
「だよな…薄々自分でも思ってはいたけど」
家で済ませると言う方が楽なような気もしたが、あえてそんな事は言えない。
なんだか自分から誘っ…。
そんな気がするから。
「まあ、なんつーか…改めて、ももとデートらしい事したいな〜…なんて思ったからさ」
「えっ」
「…そんな驚くな」
ムスッとしながらも、どことなく照れ臭そうに目を伏せる瑠衣斗に、やっぱり顔が熱くなる。
瑠衣斗なりにきっと、私が喜ぶと思って連れてきてくれたに違いないなんて、そう思ってもいいだろうか。
綻ぶ顔をそのままに、私は食べかけのご飯を口に運ぶ。
瑠衣斗がそんな事を考えていてくれた事が、何よりも嬉しかった。
「ニヤニヤしてんなよ」
「え?ニコニコだよ」
「…同じだろう」
何気ない今この瞬間が、とても幸せで満たされる。
目の前に瑠衣斗が居る事が、本当に嬉しく思う。
「るぅ顔赤いよ」
「う、うるせえな!!あえて突っ込むなよ」
時々めちゃくちゃ強引だったりするのに、こんな風になってしまう瑠衣斗が、可愛くてたまらない。
2人で騒ぎながらも食事を済ませて、やっぱり店内に居る犬やグッズにはしゃいだ私は、瑠衣斗に引きずられるようにしてお店を後にした。
ももちゃんが居なかったら、ひょっとしたら来れなかった場所。
一つずつ思い出が増えていくようで、またそれも嬉しかった。