いちごいちえ




瑠衣斗とこんな場所に来るなんて、正直思ってもみなかった。


それに、ももちゃんが居るなら、尚更お店なんて限定されてしまう。



「なんか、るぅがこんなお店に居るって…変な感じ」



「だよな…薄々自分でも思ってはいたけど」



家で済ませると言う方が楽なような気もしたが、あえてそんな事は言えない。



なんだか自分から誘っ…。


そんな気がするから。



「まあ、なんつーか…改めて、ももとデートらしい事したいな〜…なんて思ったからさ」



「えっ」



「…そんな驚くな」




ムスッとしながらも、どことなく照れ臭そうに目を伏せる瑠衣斗に、やっぱり顔が熱くなる。


瑠衣斗なりにきっと、私が喜ぶと思って連れてきてくれたに違いないなんて、そう思ってもいいだろうか。



綻ぶ顔をそのままに、私は食べかけのご飯を口に運ぶ。



瑠衣斗がそんな事を考えていてくれた事が、何よりも嬉しかった。



「ニヤニヤしてんなよ」



「え?ニコニコだよ」



「…同じだろう」




何気ない今この瞬間が、とても幸せで満たされる。


目の前に瑠衣斗が居る事が、本当に嬉しく思う。



「るぅ顔赤いよ」



「う、うるせえな!!あえて突っ込むなよ」



時々めちゃくちゃ強引だったりするのに、こんな風になってしまう瑠衣斗が、可愛くてたまらない。


2人で騒ぎながらも食事を済ませて、やっぱり店内に居る犬やグッズにはしゃいだ私は、瑠衣斗に引きずられるようにしてお店を後にした。



ももちゃんが居なかったら、ひょっとしたら来れなかった場所。


一つずつ思い出が増えていくようで、またそれも嬉しかった。
< 119 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop