いちごいちえ
「可愛かったね〜。ももちゃんに合うサイズの服置いてなかったのが残念だなあ」
「着せるつもりか」
「だって絶対可愛いよ」
「女って分かんねー」
車に乗り込み、瑠衣斗がエンジンをかける。
まだ余韻に浸っていた私は、頭の中でももちゃんの服を着た姿を想像してしまう。
なんだかすっかりと、私は犬好きになってしまったらしい。
「さてと。帰るか」
なんとなく声が出せずに、私は返事の代わりに小さく頷いた。
胸がキュッとして、すごく苦しい。
瑠衣斗が手際よくパーキングから車を出し、そのままゆっくりと走らせる。
今までが楽しすぎたせいか、瑠衣斗のそんな言葉にさえもなんだか気分がやたらと沈んでしまう。
でもそれは、きっとそれだけの理由じゃない。
1人になる事が、寂しくて怖いんだ。
「なんか買ってくモンとかないか?」
「…うん、大丈夫」
無理矢理に口元を持ち上げてみても、顔が硬い気がする。
離れたくない。
寂しい。
そんな言葉は、るぅを困らせちゃうだけだよね。
すっかり暗くなった夜空に、星は少ない。
街の明かりに隠されてしまったように、たくさんの落ちてきそうな程の星屑は、どこを見ても見当たらない。
それどころか、新月のせいか空の黒さが一段と濃い気すらする。
小さく流れてくる音楽を耳にしながら、街から溢れるネオンの光を追いかけた。