いちごいちえ
車は街を外れ、住宅街へとやって来た。
気が付くと、もうすぐそこには私の家が建っている。
ゆっくりと徐行した瑠衣斗の車が、私の家の前に横付けされる。
それと同時に、重い石のような固まりが胸に居座ってしまったかのような感覚に捕らわれる。
「よし、着いたぞ。荷物運ぶな」
「あ…ありがとう」
エンジンを止めた車から降りた瑠衣斗に続くように、ゆっくりと車から降りる。
見上げた家は明かり一つ灯っていなくて、玄関先の証明が暗がりを感知し、独りでに煌々と灯っているだけだ。
誰も居ないと言う事を、安易にしらしめられたようで、何とも言えないまま立ちすくむ。
「荷物こんなけか?」
「うん」
車の扉を閉めた瑠衣斗が、私の荷物を肩に掛けながら振り返る。
微かな明かりに照らされた瑠衣斗の顔が、私を切なくさせる。
今までずっと一緒にいたからか、ここで離れてしまうと思うと、今すぐに胸に飛び込んでしまいたい。
広くて力強い腕に包まれたら、どんなに満たされるだろうか。
「運ぶよ」
「ありがとう。ごめんね」
「いーよ。こんくらい当然だろう」
ふわりと笑った瑠衣斗が、家に向かって歩き出す。
踏み出す足が重く感じるのは、やっぱり瑠衣斗と離れたくないから。
並んで玄関まで続く道を歩くが、この道がどこまでも続いてくれたらいいのに、なんて叶わない事を願ってしまう。
そして、そんな事を考えていたら、あっと言う間に玄関に着いてしまった。