いちごいちえ
私の顔を挟み込むようにして、瑠衣斗が両手で挟み込んでいる。
その片方の手をそっと離すと、そのまま私の頬に触れた。
ドアに手を付いていたせいか、その手のひらはひんやりと冷たい。
優しく撫でられると、瑠衣斗がそのまま私の額に小さくキスを落とす。
なんだかくすぐったくて再び目を閉じると、その瞼に瑠衣斗がキスを落とした。
額、瞼、頬へと落とされたキスに、首筋がゾクリとする。
目を閉じたままの私の頭を、優しく包み込んだ瑠衣斗は、そのまま私の唇を塞いだ。
優しくかき回される髪に、頭の芯がクラクラとする。
段々と深くなる口付けに、私は抵抗する力さえも奪われていくようだ。
「ふ…んっ」
与えられる甘い痺れに、体中の力が抜け落ちていく。
立っているのもキツくなってきて、足から力が抜ける。
それを支えるようにして、瑠衣斗が私を抱え込む。
「るっ…まっ…まって」
「いやだ」
私の必死の制止すら呆気なく却下されてしまい、再び瑠衣斗の唇が深く与えられる。
思わず意識を飛ばしそうになり、必死に踏みとどまる。
夢中にさせられてしまいそうになるのは、瑠衣斗が私に口を聞かなくさせるため。
でも私は、それでも必死に力なく瑠衣斗の胸を押した。
「…なんだよ」
不機嫌そうにそう言いながらも、ようやく瑠衣斗が唇を離す。
早く要件を言わないと、きっと次はもう無いような気がした私は、冴えない頭を必死に働かせ、口を動かした。
「ももちゃんが…ね?あの〜…」
「…あ、そうだった……」
大人しく傍らで座るももちゃんは、玄関から廊下へ上がっていいものか分からないような顔をして、私達を見つめていたのだった。
「…ごめん。今足拭いてやるからな」