いちごいちえ
ハッとした私は、今までの雰囲気を振り切るようにして慌てて口を開ける。
「わわわ、わ、私、タオル持ってくるよ!!」
「え?あ…サンキュ。適当に一枚よろしく」
「うん!!」
慌てて靴を脱ぎ、廊下に上がる。
忘れないよう、ちゃんと照明も点けた。
なんだろう。
今までるぅと、何度がこう…こんな…雰囲気になった事はあったけれど。
なんだか今までとは違う気がした。
受け止めきれない程の、瑠衣斗の気持ちを一気に感じたような気がして、顔が熱くてたまらない。
部屋の明かりをつけながら、バスルームのある脱衣場へとやって来る。
タオルの置いてある場所から適当に一枚手すると、自分を落ち着かせるために大きく息を吸い込んだ。
ああ…どうしよう。
ドキドキしすぎて指先がビリビリと痺れる。
体全体が心臓にでもなってしまったかのように、緊張で震えるようだ。
「ももー?どうした?」
「あっ…い、今行くー」
玄関の方から、反響するように瑠衣斗の声が届く。
無理やり絞り出すようにして声を出すが、喉まで震えるようで声が上擦ってしまった。
あんまり時間を掛けるのも変なので、私は小走りで玄関へと向かう。
段差になる廊下に腰を下ろした瑠衣斗が、こちらに背中を向けたままももちゃんの頭を撫でていた。
そんな広い背中に、今までの相乗効果からか、体中が熱くなるのが分かった。