いちごいちえ
「は、はい…これで大丈夫?」
「お、これでいい。サンキュな」
そっと背後からタオルを差し出すと、瑠衣斗が振り返りながらそれを受け取る。
そんな様子を眺めながらも、瑠衣斗の一挙手一投足にドギマギとしてしまう。
「ん。もも、手」
息を弾ませながら舌を出しているももちゃんは、瑠衣斗の声に大人しく大きな手を挙げて従っている。
優しく手際良くももちゃんの手足を拭いていく様子を眺めていると、段々と気持ちも落ち着いてきた。
ひと通り綺麗に拭き終えたのを確認すると、瑠衣斗がわしゃわしゃとももちゃんの頭を撫で回す。
「よーし。いいぞ」
…るぅの手が…なんかちっちゃく見えちゃう。
ももちゃんの大きさのせいか、瑠衣斗がなんだかいつもより小さく見える。
そんな事を考えていると、瑠衣斗の手が放れた途端、ももちゃんがゆっくりと部屋へと歩き出す。
「ひょっとして、龍雅よりお利口さんかもだよね」
「だと思うぞ」
言いながら立ち上がった瑠衣斗が、私を追い越す。
なんとなくももちゃんの後ろ姿を見送っていた私は、ぼーっと佇んでいた所を瑠衣斗に振り返られ、ドキリとしたと同時に反射的に背筋をピンと伸ばした。
「どうした?来いよ」
「あ…うん、お邪魔します」
「さっき上がってるだろう?」
「だっ…い、言い忘れたからっ」
なんだかやたらと余裕そうに、瑠衣斗がクスクス笑う。
そんな様子が悔しくて、私はキュッと唇を結んだ。