いちごいちえ




眉を軽く寄せ、瑠衣斗が首を傾げるようにして顔を覗き込む。


でも、目を合わせる事もできないまま、私は視線を足元へと下ろす。



こんな自分、嫌でたまらない。

勝手に嫉妬して、しかもそれが瑠衣斗の過去だなんて。



こんなにも胸が苦しくなるなんて、なんで今このタイミングなんだろう。



「もも?どうした?」



「………」



優しく頬に触れられた手に、更に言葉に詰まる。


何も言わない私に、瑠衣斗は小さなため息を吐いた。



急にこんな態度取られたら、誰だって困るに違いないのに。


頭では分かっていても、体がついてこない。



そんな自分に、俯きかけた途端瑠衣斗の手に力が込められた。



顔を上げられると、そらせないように両手で包まれ、思わず戸惑ったまま瑠衣斗を見上げる。



「俺には、なんでも言えって言っただろう」



真剣な眼差しとは裏腹に、優しく緩められた唇。


そんな表情に、思わずうろたえてしまう。



「でも……あ、違うっ」



「でも…?なんだよ。思ってる事あるんだろう」



口が滑ってしまい、自ら墓穴を掘る。


途端に窮地へと追いやられてしまう形になってしまい、私は目をすぐに逸らす。



根気よく粘る瑠衣斗も、そんな私の様子に少しだけイライラとした様子だ。



こんな風になりたくなくて言わない事が、逆にそうさせてしまっているようで、気持ちがずんと沈む。



再び瑠衣斗が溜め息を吐き出したかと思うと、そのまま奪うように唇を塞がれた。
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