いちごいちえ
何も言わない瑠衣斗に、不安はどんどん膨らむ。
私なんかが言うべきではない事だったかもしれないと思うと、やっぱり後悔してしまう。
そして、言葉にする事で、こうして瑠衣斗をやっぱり困らせる事になってしまったんだと思うと、自分の気持ちを恨まずにはいられない。
誰にだって過去はあるのに。
変えられない事実なのに。
それをどうこう言ったって、やっぱり仕方のない事なのに。
「それを…悩んでたのか?」
「あ…ごめん。突然…」
困らせててるよね、絶対…。
私がるぅの立場だったら、絶対困るもん……。
「俺、そんなに余裕そうに見えてたり…する?」
「…う…ん」
瑠衣斗の言葉に、私は正直に頷いた。
私がそう思ったキッカケでもあるし、嘘ではないので隠す事もできない。
それに、ここは正直にならなくちゃいけないと思った。
「そう見えてんのか……実は全く逆だけどな」
「え?」
思わず伏せていた目を上げると、そこには少し気まずそうな顔をした瑠衣斗が居た。
少し視線を泳がせた瑠衣斗は、はあ、と何度目かの溜め息を吐くと、ゆっくりと私を見つめる。
ドギマギしてしまうそんな瞳には、不安気に揺れる自分が写っていた。
「だから…自分を保つために、気のないフリとかしたりしてた」
「気のない…フリ?」
「余裕なんてねえって。ももが近くに居るだけで、心臓壊れそうだっつーの」