いちごいちえ
「え……」
それは…ひょっとして、照れ隠し…??
ムスッとした瑠衣斗を目の前に、段々と胸のモヤモヤが消えていくようだ。
物凄く分かりにくいけれども、きっと私に分かってしまったら意味がないだろうし。
驚き戸惑う私に向かって、やっぱり瑠衣斗が溜め息を吐き出す。
「言い方悪いけど、俺…お前に全く慣れないんだけど。それに…」
ガックリと肩を落としたまま、ポツリと言葉を紡ぎ出す瑠衣斗から、目が離せないままじっと見つめた。
そんな事思ってたなんて……。
こんな状況なのに、嬉しさに胸がぽかぽかして、硬くなった頬が緩められていくようだ。
「嫌になったのかと思った。嫌われたのかなとか」
「ええっ、な、なんで?」
予想もしなかった言葉に、今度こそ驚いて大きく声を上げてしまう。
そんな私に対して、うやうやしく視線を上げた瑠衣斗が、罰が悪そうな顔をして見つめ返してくる。
「…俺が先走ってばっかりだろうが」
「先走る…?」
「言わせる気か……分かんなくていーよ」
私から腕を解いた手で、瑠衣斗が無造作に前髪をかきあげる。
やっぱりイライラした様子だったけれども、さっきまでとは違うように感じる。
チラリと私に視線を向けた瑠衣斗と、バッチリと目が合い、何だかドキリと体が小さく跳ねる。
じっと見つめる瑠衣斗の瞳からは、真っ直ぐなモノさえ感じるような、真剣な眼差しだ。
トクン、トクンと、鼓動する胸をそのままに、瑠衣斗がゆっくりと口を開ける様子を見つめた。
「お前と居ると、初めての事ばっかりで、他の奴なんかには感じなかった事しかない。だからかなり困ってる」
嫉妬なんて、これからする余裕なんてないのかもしれない。
でも、こんな言葉が聞けるのなら、たまには嫉妬してもいいかな、なんて思ってしまう私は、やっぱり瑠衣斗を困らせてしまうのだろうか。