いちごいちえ
優しく重ねられる唇に、背筋が震える。
瑠衣斗の想いが染み込んでくるようで、その温もりに溺れそうになる。
「…ダメだ」
……え?
唇の隙間から、小さく呟かれた言葉。
思わず目を開けて体を固めると、ゆっくりと重ねられた唇が離れていく。
「るぅ…?」
ダメ?って…何がダメ?
意味の分からないまま瑠衣斗を見つめていると、ガックリと瑠衣斗が頭を垂らす。
「えっ!?ちょ…っなんで?どうしたの」
「ダメだって…決心が鈍るだろう」
「決心?」
「……お前…小悪魔だな」
「は!?」
だいたい私は、瑠衣斗の言う決心とやらを知らない。
なのにそんな事を言われても、余計に訳が分からないだけだ。
ようやく顔を上げた瑠衣斗が、チラリと私を細めで見つめる。
何か言葉を考えているような表情から、今度は呆れたように溜め息を吐いた。
「俺に襲わせるつもりか」
「なっ、なんでそうなるの!?」
「ももの鈍感さは、俺の決心を揺すりすぎだ」
さすがの私にも、瑠衣斗の言いたい事が分かる。
勢いで何も考えずに飛び出してきてしまったけど、私は瑠衣斗を苦しめてしまっているようだ。
だってあの時は…そばに居たいって必死だったんだもん……。
なんて言ったら、また瑠衣斗の決心とやらを、鈍らせてしまいそうで言えなかった。