いちごいちえ
やたらとご機嫌な瑠衣斗と、なんだか意地悪ばかりされて不機嫌な私。
すっかりふてくされてしまった私に、瑠衣斗はニコニコと笑顔を向ける。
やっぱりなんか意地悪な笑顔だけど。
しばらく歩いていくと、だんだんと人も増えてきた。
全く知らない人でも、気さくに声を掛けて挨拶してくれる土地柄に、ここ最近は慣れたとは言えなんだか今日は落ち着かない。
さらには瑠衣斗が地元では有名人ともあって、やたらと声が掛けられる。
そのせいか、ぎこちない笑顔を向ける事になり、瑠衣斗に再び笑われる羽目になった。
会場に着く頃には、沢山の人混みの中に紛れるようになり、自然と瑠衣斗との距離も縮まる。
「すっごい人…」
「潰されんなよ?」
会場は街の中にある、小学校のグラウンドのようだ。
小学校と言っても、グラウンドはやたら広くて土も水捌けの良さそうな立派なものだ。
人混みから庇うように、背中から包み込まれるようにして瑠衣斗が私を隠す。
うひぇぇ〜っ。
み、みんなに見られちゃうよっ。
瑠衣斗のガッシリとした体を、背中でダイレクトに感じ、私の体温は鰻登りだ。
1人ドキドキして落ち着かない私は、キョロキョロと周りを伺ってしまう。
そんな私を、瑠衣斗がクスクスと笑う。
感じる温もりに、私は眩暈を起こしそうな程ドキドキしてるのに、やっぱり瑠衣斗はおかまいなしで余裕な様子だ。
「照れるなよ」
「照れるよ!!」
間髪を入れずに言った私を、やっぱり瑠衣斗は笑うだけで、離してはくれなかった。