いちごいちえ




やたらとご機嫌な瑠衣斗と、なんだか意地悪ばかりされて不機嫌な私。


すっかりふてくされてしまった私に、瑠衣斗はニコニコと笑顔を向ける。



やっぱりなんか意地悪な笑顔だけど。



しばらく歩いていくと、だんだんと人も増えてきた。



全く知らない人でも、気さくに声を掛けて挨拶してくれる土地柄に、ここ最近は慣れたとは言えなんだか今日は落ち着かない。



さらには瑠衣斗が地元では有名人ともあって、やたらと声が掛けられる。



そのせいか、ぎこちない笑顔を向ける事になり、瑠衣斗に再び笑われる羽目になった。



会場に着く頃には、沢山の人混みの中に紛れるようになり、自然と瑠衣斗との距離も縮まる。


「すっごい人…」



「潰されんなよ?」




会場は街の中にある、小学校のグラウンドのようだ。


小学校と言っても、グラウンドはやたら広くて土も水捌けの良さそうな立派なものだ。



人混みから庇うように、背中から包み込まれるようにして瑠衣斗が私を隠す。




うひぇぇ〜っ。

み、みんなに見られちゃうよっ。



瑠衣斗のガッシリとした体を、背中でダイレクトに感じ、私の体温は鰻登りだ。


1人ドキドキして落ち着かない私は、キョロキョロと周りを伺ってしまう。


そんな私を、瑠衣斗がクスクスと笑う。



感じる温もりに、私は眩暈を起こしそうな程ドキドキしてるのに、やっぱり瑠衣斗はおかまいなしで余裕な様子だ。



「照れるなよ」



「照れるよ!!」



間髪を入れずに言った私を、やっぱり瑠衣斗は笑うだけで、離してはくれなかった。
< 14 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop