いちごいちえ
「ありがとう。シャワーも」
「あ?…ああ、うん」
密着する場所が、ぽかぽかと暖かい。
部屋には冷房が付けられていて、シャワーと言えども夏場の暑さと熱くなった体に心地良い。
瑠衣斗の地元では、冷房なんてほとんど使われなかったせいか、逆に違和感すら感じた。
でも、それだけ環境が違うと言う事でもあり、再び帰ってきたと言う事実にほんのりと胸が焦げるようだ。
目の前には、私がシャワーを浴びる前までは付いていなかったテレビから、賑やかな笑い声が聞こえてくる。
この季節になると、毎日のように特番が組まれ、似通った番組が永遠と放送されている。
そんな中、ふとテレビの脇にある小さな卓上カレンダーが目に入ってきた。
何気なく日付を目で追うと、一つの日付に目が釘付けになり、離せなくなる。
針が日付けを跨ぐと、訪れるその日付け。
忘れていた訳ではなかったけども、なんだかドキドキする事ばかりで、意識なんて全くしていなかった。
……いや、意識しないよう、むしろ、瑠衣斗によってそうされていたのかもしれない。
日付けが変われば、明日は家族の命日だ。
偶然なのか必然なのか。
命日を私がここ地元で過ごせるよう、考慮して帰ってきたのか。
それとも、本当にたまたま偶然なのか。
どちらにしろ、瑠衣斗がそばに居ると言う事が、私には心強く感じた。
前に進むんだ。向き合おうと、そう決めたから。
優しい温もりに、私は小さく口元を緩めた。