いちごいちえ
寝間着の生地が薄くて、直に瑠衣斗の体温が伝わってくるようだ。
でも私は、もう瑠衣斗の肌の体温を知っている。
こんなにも、人の肌が暖かいと言うことを。
「やけに大人しいな。眠くなったのか?」
頭を撫で付ける手を止めて、瑠衣斗が背後から顔を覗き込む。
更にぐっと近付いた距離に、ピクリと肩が震える。
違うよ。るぅの事考えてたんだよ。
なんて、そんな事恥ずかしくて言えない。
瑠衣斗の視線から逃れるように、慌てて顔を横に振る。
頭に掛けられていたタオルを取られると、少し隠れていた視界が広がり、覗き込んでいた瑠衣斗とばっちりと目が合ってしまう。
「ん?どうした?」
「え?ううん!!なんでもない」
まだ空気を含んでない、何もセットもされていないサラサラの髪が、いつもの瑠衣斗より幼くも色っぽく感じさせる。
じっと見つめる色素の薄い瞳が、儚げに揺れているようだ。
透き通ったその眼差しは、何か言いたげにも見え、私の意識を全部持って行ってしまう。
「あ…あのさ」
「…え?」
ふっと伏せられた瞳に、同時に発せられた言葉。
なんだか躊躇っているようにも見えるその様子に、瑠衣斗を不思議な気持ちで見つめた。
やけに緊張したような面もちで、なんだかとても言いにくそうに、口を固く動かそうとしては視線を上げ、視線を外して口を引き結び再び上げ、を繰り返す。
……なんだろ。
どうしたんだろう。
思わず眉を潜めてしまう程、なんだか瑠衣斗の様子が可笑しい。
言い出したい事の内容なんて予想もつかず、私は首を捻るしかなかった。