いちごいちえ
「ん…もも……?」
「えっ…あ、お…はよ〜」
いつの間にか、どこか一点を見つめていた私は、瑠衣斗が目を覚ました事にさえ気が付かなかった。
それどころか、動揺したように舌がもつれてしまう。
「…おはよう」
まだ重そうな瞼を薄く開けて、瑠衣斗がぼんやりと私を見つめる。
私は自分の心情を悟られたくなくて、ぎこちなく頬を引っ張り上げた。
「よく寝てたね。もう少し寝る?」
「んー…いや、起きる」
私の言葉に返事をしながらぐっと伸びをすると、ようやくパチリと目を開けた。
いつもならなかなか起きないし、寝起きの悪い瑠衣斗にしては珍しく、目覚めの良い朝だ。
「…曇りか」
手を伸ばしてすぐ頭上のカーテンを少しめくると、瑠衣斗が窓の外を確認した途端ポツリと呟く。
先ほどには眩しく感じたせいか、曇りと聞いて少し意外な気もしたが、部屋の暗さと相まっているせいだろう。
起き抜けの瑠衣斗が気怠そうに私に向き直ると、じっとみつめられて思わず動けなくなる。
もう何度もこうして一緒に朝を迎えているはずなのに、私には慣れる事なんてできずにいる。
「そんな見つめるなよ…照れる」
そしてそれは、どうやら瑠衣斗も同じようだ。
「…いい加減、襲うぞ」
「え!!」
でもやっぱり、感覚は違うらしい。