いちごいちえ
慌てて体を起こした私と共に、続いてムクリと瑠衣斗が起き上がる。
再びチラッと私を見ると、瑠衣斗が手を伸ばして私の頭を優しく撫でてくれる。
どうやら寝乱れた私の髪を、手櫛で直してくれているようだ。
「どっか行きたい所とかあるか?」
「私…?う〜ん…」
「って言っても、天気悪そうだけどな」
寝起きのせいか、いつもより掠れた瑠衣斗の低い声が、私の鼓膜を刺激する。
色っぽくも感じてしまうその声に、朝から顔が熱くなる気がした。
「るぅは…?」
そんな気持ちを振り払うように、誤魔化すようにして言葉を重ねる。
目を覚ましたと言っても、まだぼんやりとした瑠衣斗は、今にも再び眠ってしまいそうにすら感じてしまう。
何だか子供っぽくも見えて、それが少しだけ気持ちを楽にする。
「俺?俺は…たまには2人っきりで、家でのんびりしたい」
少し気を緩めた途端、油断したせいかそんな瑠衣斗の言葉にやたらとドギマキしてしまった。
てっきり、宗太の家に行くか、こっちに両親だって来てるので、会いに行くかと思った……。
そうは思ったものの、瑠衣斗の言葉は私にとって嬉しい言葉だった。
今まで、瑠衣斗の地元では毎日のように外に出歩いていたので、なんだかんだのんびりと過ごす事が勿体無くも感じていたせいか、そんな日は無かった。
もちろん、2人っきりでこうしてのんびりと過ごす事も、なかったのだ。
「それか、行きたいトコとかあんのか?」
「ううん。今日はのんびりしよう?」
そして、付き合ってから、こうして2人でのんびりと過ごすのは、初めての事で嬉しく思う自分が居た。