いちごいちえ
「…俺ばっか、ももの事が好きみたいでムカついた」
「え?」
思ってもみなかった言葉に、驚いて目を見開く。
なんでこう…都合悪い方に変換しちゃうかな……。
そんな私の気持ちにも気付かないまま、瑠衣斗が再び視線をそらしながらポツリと呟く。
「ちょっとは意識してくれてもよお…」
瑠衣斗が言いたい事は、きっとあの日の事。
一緒に瑠衣斗のベッドで寝て、別の日、私の家でキスをした……。
思い出すだけで、今でも胸がキュンとして、顔が熱くなってしまうような出来事。
私の事、さんざん鈍感だ鈍感だって言うけれど、るぅだって十分鈍感だよ。
「…ま、いーや。今は付き合ってスーパー来れたし」
そう言いながらも、納得なんてしていないかのようにして、瑠衣斗は意地悪な笑みを浮かべてみせる。
そのまま、今度は私の手を少し強引に、でもしっかりと手を握り締めると、歩幅を合わせて私と並んで歩き出す。
びっくりするような事で、こんな風に拗ねてしまう瑠衣斗に、私は小さく微笑む。
不器用な瑠衣斗の愛情表現に、驚かされながらも嬉しく思う。
「るぅって鈍感だよね」
「なんだと」
「なんでも〜?」
その頃から、るぅの事好きだったんだけどね?
いつか、そうるぅに教えてあげようかな。
教えたら、るぅはびっくりしちゃう?
嘘つけ。って、信じたりしなかったりする?
でもきっと、そう言いながらも喜んでくれるよね。
私の大好きな笑顔で。
ほんのり暖かくなった気持ちを乗せたまま、瑠衣斗と共に買い物済ませると、外に出た時には今にも雨が降り出しそうな程空は暗かった。