いちごいちえ
じめじめとした空気が、重くなったように感じる。
風が少しでてきていて、もうじき雨が降り出す事を予告していた。
「待たせたな。さ、帰るぞ」
ももちゃんを繋いでいるリードを柱から外し、瑠衣斗が優しく頭を撫でる。
ゆっくりと腰を上げたももちゃんが尻尾を振り、丸いくりくりの瞳で私と瑠衣斗を見上げた。
それにしても。
「ねえ、ちょっと買いすぎじゃない?」
「そおか〜?」
たっぷりと買い込んだ食材を、瑠衣斗は軽々と持っている。
一体何日分だろう?
と思ってしまうような程、その量といったら半端じゃない。
「ま、いいから早く帰るぞ」
苦笑いする私の手を、瑠衣斗が優しく引っ張っていく。
片手にはリードと袋をぶら下げて、何だか窮屈そうにも見えるが、瑠衣斗は気にする様子もない。
「そういえば。夏希と純平にも会いに行かないとな」
「そうだね。お土産渡さないと」
「…空気ビニールに入れてくんの忘れてた」
真面目にそう言いのけた瑠衣斗に、思わず吹き出してしまう。
本当に、こう言う所が負けず嫌いと言うか、生真面目と言うか……。
それこそ、嫌味のつもりで持ってきても、いいネタにされて笑われて終わりだと思うんだけどなあ。
なんて、言わないでおいた。
小さく笑う私を不思議そうに見つめる瑠衣斗を、何だかやけに可愛く思ってしまう。
「なんで笑うんだ?」
やっぱり意味の分かっていない瑠衣斗に、私は頬を緩ませながら首を横に振った。