いちごいちえ




「今日もすごいね…」



テーブルには、沢山の唐揚げに麻婆豆腐。卵の中華スープと何ともボリューミーなメニューが並ぶ。


私はと言うと、結局最後に卵スープの溶き卵を、スープに入れさせてもらった。


あとは、不揃いな顔を覗かせる豆腐を切ったのは、私だ。



「朝昼兼用。じゃ、いただきます」



「いただきます…」



瑠衣斗のおばさんも料理上手だが、瑠衣斗も負けず劣らず料理が上手い。


何度かおばさんのお手伝いをさせてもらったが、よくよく考えてみれば、大したお手伝いなんてできていない。


言われた通り、火の加減や調味料を入れたり、たまに食器やお皿を出したり。



おばさんが調理をする姿を見ていたはずなのに、実際に料理するとなると別物だ。



「おばさんのお手伝い…してたはずなんだけどな〜」



目の前でハムスターのように頬を膨らませた瑠衣斗が、不思議そうに私を見つめる。


そして、瑠衣斗が作ってくれた料理は、悔しいけれどやっぱりどれもおいしかった。



「ももは何でもそつなくやってのけるのに、昔っから料理だけはダメだよな」



「女として一番肝心な事ができないって…恥ずかしすぎる」



お料理教室でも通った方がいいかな……。


自然と俯きがちになる私を、瑠衣斗が小さく笑う。


それが更に落ち込み度を倍にさせるものだから、ますます顔が下を向いてしまう。



「でも、俺は楽しみだからいいけど」



「……楽しみ??」



理解のできない瑠衣斗の言葉に、首を傾げながら顔を上げた。


そして目にしたのは、ドキリとする程優しい微笑みを浮かべた瑠衣斗だった。



「ももの手料理。失敗も成功も、ももが人に作る料理は俺が第一号な」
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