いちごいちえ
ソファーまでやってくると、ももちゃんが瑠衣斗の膝に頭を乗せ、瑠衣斗が優しく頭を撫でている。
気持ちよさそうに目を閉じたももちゃんに、思わず笑みが漏れる。
「特等席だね」
「…結構重いけど」
苦笑いしながらも、瑠衣斗はその手を止めようとはしない。
確かに、こんなにも大きな頭が乗っていれば、重いに違いないだろう。
「で、どんなのが見たい?ホラー?」
「いや!!ホラーだけは絶対ダメ!!」
「…なんで。面白いのに」
ももちゃんを気にしながらゆっくりと立ち上がった瑠衣斗が、テレビ台から何本かの映画を取り出す。
あまり映画なんて見ない私には、瑠衣斗が取り出した映画のジャケットを見ても、どんな映画かも想像すらつかない。
唯一分かるのは、絶対に怖いだろうと思われるジャケットのみだ。
「これなんか名作だと思うんだけど」
「うわ。絶対無理っ」
しばらくどれを見るか吟味してから、よく分からない私に代わって瑠衣斗が一本選んでくれた。
やっぱりよく分からなかったけれど、どうやらホラーではなさそうでホッとする。
ディスクを手際よくセットして、瑠衣斗がリモコンを操作しながらソファーへと戻るのに従い、後に続いてソファーへと腰を下ろした。
「電気消す?」
「え?これ怖いの!?」
「怖くねーよ。雰囲気だよ雰囲気」
「消さないで大丈夫!!」
瑠衣斗の発言にいちいち敏感になりながらも、気持ちが落ち着く頃にはプロローグが始まった。