いちごいちえ
見とれる私に、伸ばされる瑠衣斗の腕。
そっと肩に回されると、力強く、でもとても優しく引き寄せられた。
自然と引き寄せられた私は、よろけるようにして瑠衣斗の胸に頬を押し付けられてしまう。
トクントクンと響く鼓動は、私の物なのか、瑠衣斗の物なのか。
心地良い温もりが全身に染み渡るようで、胸が震えた。
「無理する事ねえぞ」
「…無理?」
突然言われた言葉に、意味が分からずに素直に疑問を口にする。
部屋には、テレビから流れてくる音と強い雨の音が響く。
そう言ったきり、瑠衣斗は何も言わずに私を両腕でしっかりと抱き締めた。
頭を優しく撫でられ、心地よさにまどろみそうになる。
すっぽりと収まってしまう瑠衣斗の胸に、じっと頭を預けた。
「思い出して我慢するんじゃなくて、素直に泣けばいいよ。今日は、そう言う日だろう」
無理してるつもりなんて、少しもなかった。
でも、知らず知らずの内に、私は我慢していたらしい。
何で今日に限って、こんなにも土砂降りの雨なんだろう。
神様が居たら、おもいきり怒っちゃうのに。
意地悪ばっかりする神様なんて、キライだよ。
「俺の仕事、お前自ら取るんじゃねーよ」
雨の日は、嫌いだった。
だから今も、聞こえないように映画に集中してたとこなのに。
8月で真夏なのに、どうして8月の雨は冷たいの?
るぅも神様と同じくらい、相当意地悪だよ。
「大して映画の中身なんか、本当は分かってねークセに」