いちごいちえ
「な…なに言い出すの!!」
あまりにも有り得ない状況に、私の頭の中はぐちゃぐちゃだ。
そんな中、昨夜の出来事が鮮明に蘇ってきてしまう。
なんで今思い出すかな!?
ちょっと本気でやめてよ〜!!
そんな私の心の願いも虚しく、瑠衣斗が小さく肩を震わせている事に気付く。
「さっきから何考えてんの?俺が食いたいモンって、たこ焼きなんだけど…」
「!?」
「な〜に考えてたのかな?ももちゃん」
瑠衣斗の答えに、もう金魚のように口をパクパクとさせるしかできない。
てゆーかね!?
るぅ絶対私で遊んでると思うのね!?
やたら雰囲気出してわざと私の反応で楽しんでるとしか思えないのね!?
かっ…勝てるかあ!!!!
「あ、ほら。抜けるぞ」
そして私は、たこ焼きを無言で食べていた。
「機嫌直して。ももちゃん」
瑠衣斗が買ったたこ焼きを全て奪い取り、比較的校舎から近い小さな階段のようになっている場所に腰を下ろし、目前に広がる賑やかな景色を無心に眺めていた。
背後にはぼんやりと佇む夜の不気味な校舎も、グラウンドに広がる明るい光に照らされ、独特な雰囲気が明るくも感じる。
グラウンドに円を描くように、ぐるりと陣を張った的屋に、沢山の人混み。
中心には、太鼓を乗せた立派な櫓が佇み、お祭りの雰囲気も存分に楽しめる場所だ。
「ごめんって!!やりすぎました」
「……たこ焼き1人で食べてやる」
かれこれこんなやり取りを、グラウンドに入ってから30分程続けていた。
「ごめんって〜!!!!」