いちごいちえ
「不意打ちやめてよね」
「不意打ちじゃねえ。ももがそんな顔してるからだろう」
てっきり、るぅは覚えてなんかないと思ってた。
なのに、いきなりこんな…不意打ちすぎるよ。
もう、私の耳には、すんなりと雨の音が入ってきてしまう。
ずっとモヤモヤしていた物が、胸を圧迫するように締め付けてくる。
息苦しいと思った時には、目頭が熱くなっていた。
「俺にとっても、大切な人達なんだ。勇磨なんかよくなついてくれただろう?」
「……うん」
喉が震えて、声が震える。
それどころか、体が小刻みに震えてそれを抑える事なんてできない。
いつも1人だった。
1人きりで、こうして震えてた。
毎年、毎年。
誰にも弱音なんて吐くもんか、って。
泣くもんか、って。
泣いたら全部、認めてしまうようで、苦しかったから。
みんな、居なくなっちゃったんだって、ひとりぼっちなんだって、現実を認めるのが怖くて怖くて仕方なかった。
帰ってくるって、信じていたかっただけなんだ。
「なあ、もも?」
「……うん」
本当は、分かってたはずなのに、どこかで頑なに認めようとしなかったんだ。
「生きるのは、1人じゃない。ももは独りぼっちなんかじゃねえ」