いちごいちえ
無駄だと分かりながらも、冷静さを保とうとしていたのに、そんな事言われたら適わないじゃん。
ひょっとしたら瑠衣斗は、ずっと気付いてて今まで何も言わなかったのかもしれない。
私が隠してた、胸の苦しさ。
映画観てる途中に、いきなりそんな事言われても、頭が追い付かないよ。
それどころか、あまりにも場面変更が急すぎて、気持ちが置き去りだよ。
でもどうやら、知らず知らずのうちに、私は顔に出ていたらしい。
正直、つい今まで観ていた映画の内容ですら、解説できない。
引き込まれていくように感じていたのは、余計な音に意識をそらされないために、ひっしで画面を見つめていただけなんだ。
「俺は、ももにそう教えられたんだ。ももの事好きになって、初めて知った感情がたくさんあった。好きとか、あいつら…美春達に対して感謝したりとか」
瑠衣斗には、消えない大きな傷がある。
でもなんで、こんなにも瑠衣斗は強いのだろう。
「俺、めっちゃ生きてんだなーって、ももの存在ですっげえ感じた。あいつらの存在もだけどな?だから、死ぬなら1人だけど、生きるのは1人じゃねえんだなって思った」
瑠衣斗の言葉に、嘘は感じない。
そしてなによりも、そんな言葉の意味が、私にはひしひしと伝わってくる。
私も同じだから。
瑠衣斗を好きになって、いろいろな思いをして、辛かったり悲しかったり、幸せを感じたりした。
それが、生きてるって事。
みんながそばに居て私を支えてくれるのは、1人じゃないって事。
生きてるって証拠。
死ぬときはみんな、1人だから。
「ももが、勇磨達を想えるのは、生きてるからこそだろう?思い出す事は辛い。でも、忘れないためなんじゃないか?勇磨達が生きてた事を」
帰って来ない人達を想う程、辛く悲しい事はない。
でも、その人達を思い出さない事程、辛く悲しい事はないんだ。