いちごいちえ




私は、大切な事を忘れていた。


自分が認める事をしない事で、見失ってしまっていたんだ。



時間は人それぞれ違うけど、少しずつでも受け入れていかなきゃいけない。



私は、生きてるから。


いつまでも想っていたって、いいじゃないか。


誰にでも、死んでしまった人に対して悔いや後悔は必ず残る。

けれど、それはいつか、自分が生きてく糧になる。



きっとそれは、最後にその人が教えてくれた事。




後悔しないように生きるんだ。って。




だから、思い出すんだ。

もう会えない人達の事を。


だから、想うんだ。


みんな、願うんだ。




「今日で、五年だな…」



「…るぅとも知り合って、五年目だね」



「そうだな。早いな」



いつの間にか溢れた涙が、物凄く温かい。


家族が死んだ時も、それからの命日も、泣いた事なんか一度もない。


こんなにも温かい気持ちで、五回目となる家族の命日に初めて涙した。



しっかりと私を受け止めてくれる瑠衣斗に、私は気持ちが軽くなっていくのを心地良く感じた。



浮かんでくるのは、沢山の家族の顔。


普通に過ごしていた毎日。


やっぱりまだ胸が切なく軋むけれど、不思議とそれは苦痛ではなかった。
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