いちごいちえ
「雨、やまねえなー」
雨の音に混ざるように、瑠衣斗の呟いた声が聞こえる。
あの時の記憶をすり替えられるのなら、全て瑠衣斗で埋め尽くしてしまいたい。
でも、そんな事はできないし、私は受け止めなきゃいけないんだ。
時間が流れ、笑い話になんてならないけれど。
こうして毎年、るぅがそばにいてくれるよね?
一緒に思い出してくれるよね?
「また、みんなでたこ焼き食べたいね」
「…そうだな」
顔をあげると、優しく笑ってくれる瑠衣斗の笑顔がある。
ほろ苦いモノが胸を刺激して、くすぐったさに口元が自然と緩む。
優しく頬を撫でられると、ゆっくりと瑠衣斗の顔が近付いてきた。
触れるか触れないかの所で、瑠衣斗がぐっと私を引き寄せる。
力強くも優しく、そんな瑠衣斗に唇を塞がれた。
瑠衣斗の体温が、私に全て伝染するように、全身を熱くする。
苦しい程のキスに、頭の芯がほんやりとしてきてしまう。
「ふ、ん…」
次第に甘く漏れる私の吐息は、瑠衣斗の物と重なり合い、拍車を掛けるように鼓動を激しくする。
熱いくらいの瑠衣斗の体温と、求め合うようなキスに、いつの間にか夢中にさせられていた。
もっともっと、瑠衣斗を感じたい。
離れたくない。
溶けて混じって、くっついちゃえばいいのに。
そんな中、瑠衣斗の大きな手のひらが体のラインをなぞった。
途端に身じろぎした私を、逃がさないように抱き寄せると、瑠衣斗はそのままその手を止めなかった。