いちごいちえ
困ったように苦笑いをしながら私を見つめる瑠衣斗に、小さく息を吐いた。
溜め息を吐いた私に気付くと、途端に瑠衣斗の表情が固まった。
「いや…あの、本当にごめん…」
次の瞬間には、そう言いながらも焦りを隠し切れていない瑠衣斗に、思わず目を見張る。
…あれ。なんだろう。
ちょっと……いやかなり、面白いかも。
どうやら私が本気で怒ってしまったと思っているらしく、瑠衣斗が目を泳がせる。
何か言葉を探しているようだが、瑠衣斗の性格を考えると、うまい言葉が出てこないのだろう。
なんてったって、るぅって口下手だしね。
……私もだけど。
「なんかさ、やっぱりるぅって、余裕あるってゆうか…私はこんなにドキドキしてるのにさ」
「そっ……え?」
私の言葉に、今度こそ大きく目を見開いた瑠衣斗。
ちょっと嬉しそうな表情に見えるのは、気のせいではないだろう。
どうしよう。
るぅって本当に分かり易いのかも。
私がちゃんと、るぅを見てなかっただけなのかな?
素直な反応に、何だか瑠衣斗を可愛いと思える余裕まで出てきた。
それと同時に、瑠衣斗に意地悪をしたいという気持ちまでふつふつと湧く。
「えーと…うん、あのな、ちょっと…いやだいぶ、浮かれててだな」
途切れ途切れと言葉を繋ぐ瑠衣斗に、私は耳を傾ける。
本当はもうなんとも思ってないんだけど。
でも、何だか瑠衣斗が一生懸命なので、瑠衣斗の言う言葉を聞いてみたかった。
本当は、素直すぎて分かりにくいんだと言う事を、ようやく私は発見できたような気がして嬉しかった。