いちごいちえ




固まるしかない私に対して、じっと見つめていた瑠衣斗が、ふいに動く。



ええっ!!



目で追うしかできず、瑠衣斗がソファーから降りたと思った途端、横抱きにされた。



「る、るぅ!?」



「移動」



「えっ、ひゃあぁ」




横抱きにされたまま、露わになった自分の体を両手で覆う。


ぐらりと揺れたかと思うと、瑠衣斗が歩き出した。


思わず落ちてしまいそうな感覚に可笑しな声を出してしまったが、瑠衣斗がしっかりと抱きかかえていて、落ちる事はなかった。



ドキドキと息苦しくて、全身が石のようにカチカチだ。


でも、一度大きな波が去った私は、思ったように力が入らない。


そして、瑠衣斗が歩く度に、やたらと意識が冷静になっていく。


剥き出しの瑠衣斗の肌が、熱くて艶めかしい。


軽々と私を横抱きにして歩く瑠衣斗に、物凄くドキドキした。



息が詰まるような、部屋の空気。


静まり返った中に、雨の音がシトシトと混ざっている。


灯りのない薄暗い寝室へと踏み入れた途端、息が詰まる程胸が締め付けられた。


両手が塞がったままの私を、瑠衣斗がそっとベッドへと降ろす。


今まで瑠衣斗の熱に触れていたせいか、シーツがやたらとひんやりと冷たい。


ふと顔を上げると、私を見つめる瑠衣斗の瞳。


リビングから漏れる灯りが、瑠衣斗を照らし出し、その瞳に私の戸惑う顔が写り込んでいる。




沈黙が、私と瑠衣斗を包み込む。


髪をすくうように頬に触れられ、体がビクンと震える。


目に見えてしまうんじゃないか、と言う程、胸の鼓動が激しくなる。


瑠衣斗の少し潤んだ瞳に、吸い込まれてしまいそうだった。
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