いちごいちえ
「るぅ…お客さん…」
遠慮がちにそう声を掛け、瑠衣斗を見上げる。
今にも爆発してしまうんじゃないか、と言う程に、瑠衣斗はすこぶる不機嫌だ。
なんとも言い難いが、苦笑いするしかない。
瑠衣斗が今まで、ギリギリまで我慢していてくれていた事は、私が一番知っている。
できれば今すぐにでも、そこから解放してあげたいのに。
「…嫌な予感がする」
「い…嫌な予感…て?」
起き上がり、体を離した瑠衣斗が、無造作に髪をかきあげる。
艶やかな肌に、適度で綺麗な筋肉と筋。
そして、くっきりと刻まれて緩む事のない眉間の皺。
その間も、チャイムが鳴り止む事なく響き続けている。
「あークソっ。すぐ済ませてくる」
「う、うん…」
リビングへと入った瑠衣斗を見送り、体に布団を巻き付ける。
火照った体の熱のせいで、やたらとシーツがひんやりと感じる。
瑠衣斗の香りがして、すっぽり包まれているような幸福感に、頬が緩む。
でもすぐに、今までの事が脳裏に蘇ってくる。
途端に恥ずかしくなり、目を閉じて唇を引き結ぶ。
そうしている内に、何だか外が賑やかな事に気が付いた。
……なんだろう?
ドアは開けられたままで、その声はダイレクトに響いてくる。
耳を澄ましてみると、どこか聞き覚えのある声に身を固めた。
「な〜んだよ〜う!!上がらせてくれてもいいだろ〜?」
「おまっ…近所迷惑だ!!」
え…………。
龍雅!?