いちごいちえ
「あ…あれ?」
気が付くと、外はすっかり真っ暗になっている。
雨はまだ止んでおらず、今何時なのかも分からない。
自分が寝てしまっていた事に驚きながらも、今が夢か現実かも一瞬分からなかった。
「私…寝てた?」
「ちょっとな」
微かに微笑んだ瑠衣斗の顔が、何だか少し悲しそうな色を見せる。
そっと頬に指を這わすと、涙をぬぐうように撫でてくれる。
暖かい手の温もりに、ささくれ立っていた心が穏やかになっていく。
瑠衣斗が居てくれると言うだけで、こんなにも気持ちが軽くなるんだ。
「ねえ、るぅ…」
「ん?」
「夢見た。でも、声はするのに、みんな出てこなかった…」
今日と言う日が私に見せた、切なる願い。
でもそれは、夢の中でさえも形にはならなかった。
でも……。
「でもね、みんな楽しそうだった。混ざれなくて寂しくなっちゃったけど」
やけにリアルで、切ない夢。
でも、不思議と暖かい夢だった。
安心させようと、小さく微笑む。
そんな私を、瑠衣斗が一瞬驚いたように目を見開いて見つめる。
でもすぐに、優しく目を細めて私の頬を撫でてくれた。
「そのうち、こんな男はやめとけ…って、言われるかもな」
「るぅを?言わないよ…みんなるぅの事、大好きだったみたいだし」
「それはツレとしての俺だろう?付き合うとなると…うん、考えるのはよそう」
瑠衣斗が真剣に言うので、思わず笑ってしまう。
そんな私に対して、瑠衣斗は少し、不機嫌そうに眉を寄せた。