いちごいちえ
「ももの反応が〜…うん、可愛すぎて。俺だけそんな反応を独り占めした気分になって…」
瑠衣斗には、計算も打算も無意味なんだ。
素直なだけに、相手の素直な反応に自然と目が行くようになってしまっているのかもしれない。
だからよく、瑠衣斗は昔から人の事をよく見ている人だった。
相手の表面だけでなく、裏である本音の部分を。
瑠衣斗は本当に、私のそんな部分を引き出して、きちんと受け止めてくれたんだ。
甘えていいよ。って。
「浮かれすぎて調子こきました。だから機嫌直して。てゆーか嫌いとかなんないで」
すっかり何も言わなくなってしまった私を、大きな瞳が覗き込む。
何だか不安を全て集めたような瞳に、胸が暖かくなる。
嫌いになるなんて、ある訳ないのに。
こんなに好きなのに。
でもやっぱり私は、瑠衣斗みたいに素直にはそんな事言えない。
私と一緒にお祭りに来ただけで、こんなにも浮かれすぎちゃうらしい瑠衣斗が、本当に好きだと思った。
それに嬉しくもなった。
ちょっと意地悪すぎたかもだけど、でも、恥ずかしいだけで嫌ではなかった。
むしろ今、私にだけいろんな姿を見せてくれて、嬉しいと思えるから不思議だ。
考え方1つで、こんなにも周りの景色は変わる。
それを教えてくれたのは、間違いなく瑠衣斗なんだ。
「じゃあ、許す代わりに…」
そう言って、私は瑠衣斗に顔を近付けた。
ドキドキと鼓動は暴れるけれど、今はそれが心地良い。
「キスして?」
目の前の瑠衣斗の顔が、面白い程真っ赤に染まったのは、瞬間の出来事だった。