いちごいちえ
「大丈夫だよ」
ポツリと呟くと、再び重ねられる唇。
何度唇を重ねても、飽きる事なく私は瑠衣斗を求めてしまう。
頬に添えられていた手のひらが、ゆっくりと首筋へと伝い、背中へと流れていく。
触れられた途端、ピクッと瑠衣斗の手が止まり、それを不思議に思った私は閉じていた目をゆっくりと開けた。
「お前…最高に意地悪だな」
「…え?意地悪?」
そう繰り返した途端、背筋を指先でなぞられた。
ゾクゾクと震えそうになりながらも、私はハッと状況を把握する。
「ひゃあっ!!忘れてたあ!!」
「嫌がらせか?あいつらとグルか」
しまった!!
私服着ないまま寝ちゃったんだ!!
見下ろせば、下着だけ身につけた自分の姿に、恥ずかしすぎて眩暈を起こしそうだ。
慌てて布団で前だけ隠してみても、後の祭りだった。
違う〜。違うのに〜。
ホントたまたまあの後寝ちゃっただけなのに〜……。
「違う…違うの…。着替える時間もなくて…すぐ寝ちゃってて」
「拷問か?俺を発狂させるつもりか?」
「違うってばー!!」
段々と可笑しな事を言い始めた瑠衣斗に、顔を向けられない。
真っ赤になって必死に顔を横に振るが、今の状態では説得力もないだろう。
「…いい。玄関入れなくしてくる」
「え!?ちょっと!!ダメだよ!!」
「じゃ今から宗太に電話して…」
「だ、だめだってばあぁ〜!!」
そんな事したら…これから永遠とネタにされるだけだよ!!
どこかへ行こうとする瑠衣斗を必死に止めて、私はひやひやしながらも今後気を付けようと心に誓った。
そして、瑠衣斗の大変さも、改めて知ったのだった。