いちごいちえ
慌てて頭を出すが、すぐに引っ込めたくなる。
目の前には、やけに妖艶な瑠衣斗の顔がすぐ目前に迫り、今にも唇が触れてしまいそうだ。
若干スイッチが入ってしまっているようなので、私はそのスイッチを完璧にONにしないよう、短時間の内に様々な事を考えた。
……が、遅かった。
「んむっ…」
強引に塞がれた唇と体に、瑠衣斗の熱い体温が伝わる。
私も私なりに、先ほどまではいろいろと決意はできていた。
でも、今はそんなタイミングじゃない!!
宗太と龍雅とももちゃんが帰ってきちゃう!!
「んん!!…っ、るぅっ!!」
「ったく…なんだよ」
超絶不機嫌そうに、瑠衣斗が吐き出すように呟く。
でもなぜか、すぐに口角が妖しげに上げられる。
思わず見とれてしまいそうになる程、妖艶なその表情に、ハッと意識を引き戻した。
「帰ってきたら次こそヤバいでしょう?」
「当たり前だ。そんな焦るなよ」
……へ?
予想外な言葉に、思わずポカンとしてしまう。
あんなに止まりそうになかった瑠衣斗が、ついに完璧に壊れてしまったのかもしれない。
と言うか、とっくに壊れていたが、それを通り越して、本当の意味で可笑しくなってしまったのかもしれない。
「冗談に決まってるだろう?こんな短時間に、味も色気もなさすぎる」
「…え!?嘘!?演技だったの!?」
「…なに?残念?足りない?」
「ちっがあーう!!んもー、ホント馬鹿じゃない!?」
遊ばれていた事に気付き、私は顔が真っ赤になるのを感じながらも、必死に叫んでいた。