いちごいちえ
ハッとしたように顔をそらすと、瑠衣斗は口元を手で覆い隠して俯いてしまう。
我ながら大胆な事を言ったと思うが、何だか瑠衣斗の反応が可愛くてたまらない。
「るぅ?」
覗き込むようにして下から見上げると、やっぱり真っ赤な顔をした瑠衣斗が目をそらす。
首から耳まで真っ赤な様子に、思わず笑みが零れる。
「み、見るんじゃねえ」
「なんで?」
「いーから!!見るなって」
調子が出てきた私は、身を乗り出すようにして瑠衣斗を追い掛ける。
こんな姿、なかなか見れないから、もっと見ておきたい。
私にだけ見せてくれる、みんなが知らない瑠衣斗。
こんな可愛い姿、誰にも見せたりしたくない。
ひとしきり笑った後、瑠衣斗が観念したように息を吐き、覆っていた手で少し長い髪をかきあげる。
やっぱりまだ赤かったりするけども、最初と比べたら全然マシだ。
「いきなりんな事言うなよ。反則だろうが」
「え?仕返しだよ?」
…あ、しまった。
思わずポロリと答えてしまい、墓穴を自ら掘ってしまった事に固まる。
まずい…。
と、思った時には、もう後の祭りだ。
「…仕返し?……ふうーん」
「や、違うよ?」
「…ほーお」
そして、まんまと立場が逆転してしまう。
まるで水を得た魚のように、生き生きとした目で私を見つめる瑠衣斗に、今度こそ私が焦る番だった。