いちごいちえ
「あいつの頭の中なんて、9割方ももの事だからな」
「…ほぼ全部じゃん……」
「一割は寝る事と食う事だろう」
「それも凄いね」
ほんのちょっと照れ臭くて、嬉しくもある。
なんだか宗太の言葉に励まされてしまい、やっぱり適わないな、なんて思う。
瑠衣斗と同じように、ずっと私を見ていた1人でもあり、そばに居てくれた人でもある。
だからこそ、異性を越えてこんな話もできるんだ。
そして宗太は、私にこんな話まで教えてくれた。
「毎年、あいつ唯ノ瀬のお墓に行ってるんだよ」
「…え……」
毎年…?
驚きすぎて、声が出ない。
思ってもみなかった話に、思考回路はストップする。
そして、ふと瑠衣斗の言ったセリフが蘇った。
"今度、挨拶しに行かなきゃな"
「るぅって、バカだね」
「今更気付いたのか?あれは末期だぞ」
「ホントだね。……全然知らなかったよ」
「ももの代わり…ってのも変だけどさ、俺らも何度か顔出しに行ったりした。黙ってて悪かったな」
嬉しくて、目の前が滲んだ。
みんなの気持ちが、痛いくらいに胸を一杯にする。
1人だなんて、自分が勝手に思っていただけ。
私には、こんなにも素敵な人達がいっぱい居てくれたんだ。
「俺だって、おばさんもおじさんも勇磨も、好きだからなあ〜。あいつだけってズルいだろう?」
「はは…ズルいになっちゃうの?」
ポロポロと涙が零れる私の頭を、宗太がポンと優しく撫でる。
ふと視線を上げると、優しい笑顔を浮かべる宗太に、私はぎこちなく笑って返した。