いちごいちえ




暖かい存在に、私はずっと支えられている。


それに気付かせてくれたのは、もう居ない家族なのかもしれない。


人の暖かさに、人はこんなにも満たされるんだ。


お金や物じゃない、気持ちなんだ



「お。俊達着いたって」



「なに!?もう来たのか!?」



「あ〜あ。美春からるぅは説教だな!!だはは!!」



何も言わない私に、瑠衣斗はますます慌てる。


間違いなく今のこの現場を目撃されれば、瑠衣斗は格好の餌食になるだろう。


ソファーの後ろから、瑠衣斗が慌てたように回り込み、屈んで下から私を見上げる。


目の端で捉えた瑠衣斗の表情が、困ったように私を見つめていた。



「ももごめん…俺が悪かったら謝るから……」



理由もなにも分かってないのに、瑠衣斗は心底申し訳なさそうに謝る。


子犬のような目で、不安に揺れる瞳を向けられていると、逆に申し訳なくなってきてしまう。



違うよって言いたいのに、しゃくりあげてしまっている私は、言葉が詰まって出てこない。


さらにそこには、笑いも含まれているせいで、落ち着いて言葉を紡ぎ出す事ができずにいた。



「なあ、俺は別にるぅが悪い事したなんて言ってないけど」



「えっ!?じゃあなんだ!?なんで泣いてんだ!?」



宗太が余計に訳が分からなくなるような事を言うので、瑠衣斗がますます混乱している。


自分を落ち着かせようと息を吸い込み、手のひらで涙を拭う。


その間も、瑠衣斗が心配そうに私を見上げていた。



「…へへ……嬉し泣き」



ポツリと言った私の声は、鼻声で酷く聞き取りにくい。


でも、瑠衣斗にはしっかりと伝わったようで、一瞬ポカンとした瑠衣斗が可笑しかった。
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