いちごいちえ
「由良が今度遊びに行くって言ってたわよ」
「美春、由良さんとママ友になる〜!!!!」
おばさんの言葉に続くように、美春がニコニコとそう続く。
穏やかな2人の表情に、つられて頬が緩む。
一気に人口密度が高くなった室内に、賑やかな声が響き渡る。
ふてくされてしまったような瑠衣斗は、いじけるようにももちゃんと向かい合い、溜め息を吐き出している。
思わず苦笑いが漏れた所で、ふいに背後に人の気配がし、振り返ってみた。
「…あ、慶兄」
「よ、もも。…泣いたのか?」
「え!?あっ…ちょ、ちょっとね…」
頬を濡らした涙は乾いていたが、瞼が腫れぼったい気がする。
不思議そうに眉を寄せた慶兄に、頬が紅くなるようで照れ臭くて少し俯いた。
ふっと慶兄が笑う気配がし、優しく頭を撫でられる。
「表情が本当に豊かになった。あいつもこれから、苦労するな」
慶兄の言っている意味が分からずに、首を傾げて見上げる。
そんな私に向かい、慶兄は優しい笑顔を浮かべた。
「ももの笑顔に勘違いする輩が、たくさん出てくるんだろうな〜って意味だよ」
「や、輩?勘違いなんて誰もしないよ…」
「とりあえず、瑠衣斗に飽きたらアメリカに来ればいいからな」
相変わらずストレートな物言いに、短時間の間に何度も恥ずかしくさせられてしまう。
「おいっ!!慶兄!!」
ドギマギしてしまう私と慶兄の間を割るように、瑠衣斗の鋭い声が割って入ってくる。
まるでそれを狙っていたかのように、瑠衣斗に目を向けた慶兄が、ニッコリと微笑んだ。
「瑠衣斗、帰ったら連絡ぐらい入れれるよな?」
そう言った慶兄は、笑顔なのにとても迫力があった。