いちごいちえ
「そう言えば、仕事の方は大丈夫なのかよ」
テーブルを囲うようにして、みんなでそれぞれ箸を進める。
ちょっとした宴会のようになっていて、みんなの表情も柔らかい。
そんな中、思い出したようにポツリと言った瑠衣斗の言葉に、私は素麺から顔を上げた。
「慶兄が発ってから帰るのか?」
「多分な。仕事は三輪さん達に任せてあるし、大丈夫だ」
「ふーん。そうか…」
おじさんの言葉に、納得したように小さく頷いた瑠衣斗が、そのままチラリと私に視線を落とす。
話の内容からすると、どうやらおじさんとおばさんは、何人かの人達と一緒にお野菜などを作っているらしい。
自分なりに理解した所で、瑠衣斗が私から全然視線を外さない様子に、思わず瞬きを繰り返す。
何も言わず、ただじっと見つめる瑠衣斗の表情からは、何かを考えているようにも見えた。
え?なんだろう……??
耐えきれなくなり、思わず首を傾げてみる。
じっと見つめる瑠衣斗に耐えきれなくなってきた所で、ようや瑠衣斗の視線が外れた。
「あのさ、話があるんだけど」
突然発せられた瑠衣斗の言葉に、訳も分からず耳を傾ける。
それはみんなも同じようで、突然の瑠衣斗の言葉にみんなが瑠衣斗を見つめた。
「なんだ〜?もしかして、一緒にももと住みまーすとかか?」
「うん。そう」
龍雅の少しいやらしく言う言葉に、瑠衣斗がすんなりと頷く。
事の展開に何も考えなくなり、驚いたまま瑠衣斗を見上げ、そのまま私はものの見事に固まってしまった。
思ってもみなかった展開に、頭の回路は完全にストップしたようだった。