いちごいちえ




「ナニすれば許してくれるんだっけ?」



そう言って目を細めた瑠衣斗が、いやらしく片方の口角を上げて笑う。


すっかり立場は逆転し、思わず瑠衣斗から離れるようにして仰け反る。



やばい。この状況はとってもやばい。



「え?あれ冗談」



「ん〜?聞こえねえな」



なワケないでしょう!!

無理にも程があるでしょーに!!


ジリジリと距離を縮めてくる瑠衣斗に対して、ずんずんと後退する私。


でも、最初から壁際に座っていたせいで、後ずさりなんて全くできないまま、壁際に追い込まれる。



「だっ、誰かに見られたら困るし!!」



「見られぢゃヤベェ奴でも居るのか」



「ひゃあぁ」



ずいっと瑠衣斗の顔が近付き、距離はもう目と鼻のすぐそばまで迫られる。


迫力の魅惑的なドアップに、次は私が真っ赤になる。


もう顔だけじゃなくて、全身が熱いので見える部分は全て赤いのかもしれない。



「リクエストには答えてあげなきゃだよな」



「いい。答えなくていいから…」



「遠慮すんなよ」



「え、遠慮とかじゃなくてですね…」




真っ正面に迫る瞳から、逃げるようにして思い切り固く目を閉じた。


これ以上は、恥ずかしすぎて目なんか見ていられない。



でも待てよ。これじゃまるで…自らキスされるの待ってるみたいじゃん!!



そう思った私は、あっさり目を開けた。



そして、再び固まる羽目に。



打って変わって、真剣な表情をする瑠衣斗とバッチリと目が合い、思わず身を固めてしまった。


見惚れる程綺麗な顔は、私を大人しくするには十分だった。
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