いちごいちえ
いきなりの発言に、無駄にドギマギしてしまう。
まさか今この場で、みんなが居る中での話だとは、全く予想すらしなかったからだ。
そして、意外にもすんなりと承諾してもらった事に対して、嬉しいやらビックリやらで、なんだか変な感じだ。
「もう住む場所とか決めたのか?」
「いや…まだ具体的には全然なにも」
楽しそうな宗太の声に、顔を上げられない。
嬉しいんだけど、恥ずかしすぎるっ……。
こんな話を自分がする事になるなんて、考えた事もない。
ちょっと前まで、恋愛のれの字すら出てこない程だった事が、夢のようだ。
「ここで一緒に住むのは?あ、それか、俺の所だって空くぞ?」
「や…だから…てゆーか、慶兄のマンションは、学生の身分で住むような所じゃねえだろ……」
「いーんじゃないか?親父の持ち物だし」
……え。
おじさんの…?持ち物……。
「えー!!おじさんあの部屋買ってたんですか!?」
「部屋ってゆーか、マンションな。一応オーナー」
慶兄が龍雅に付け足すと、みんなの箸が止まった。
いつもはポーカーフェイスの宗太でさえ、眉間に皺が寄って驚いているのが分かる程に。
オーナー……。
おじさん、一体何者なんだろう。
ってゆーか、オーナー…オーナー!?
固まるみんなをよそに、少し照れ臭そうに笑うおじさんが、いろんな意味で今までと違ってみえてしまう。
「昔は不動産関係しててね。でも、田舎暮らしに憧れてて、タイミング良く慶衣斗が産まれて、さらにあの物件見つけた時に、思い切って辞めちゃった〜」
そんな私達に向かって、おじさんは笑ってそう答えたのだった。
多分、誰もが口にはしないが、思ったに違いない。
思い切りすぎだろう。と。