いちごいちえ
夏暮
結局この日は、日付を跨いだ頃に、ようやくお開きになった。
やけに私と瑠衣斗に気を使ったみんなに対して、私は瑠衣斗の両親に顔向けができず、赤くなって俯くばかり。
でも、そんな私を見て、おじさんとおばさん、更には慶兄までもが楽しそうに笑いかけてきた。
「ももちゃん。瑠衣は頑固だから、困ったらうちに家出しにおいで♪」
「大歓迎だぞ〜。連絡くれれば迎えに来るからね」
全く気にもしていないどころか、まるで喜んでいるような笑顔に、恥ずかしさでどうにかなりそうな程赤くなる。
やたらと家出、家出と言われ続け、私を歓迎してくれているんだと思うと、とても嬉しい。
改めて、本当に瑠衣斗と付き合ってるんだな、なんて思うと、少しだけ不思議な感じがする。
「むしろ、海渡ってきてもいいぞ」
「あの…ありがとうございます」
慶兄の言葉と、おじさんとおばさんの言葉に対して、そう言って笑ってみせる。
「だははは!!おいもも!!るぅがすっげえ顔してるぞ!!」
「えっ、あ…」
「うるせー。ほっとけ」
しまった。
またやってしまった。
ハッとして見上げると、不機嫌さを全面に押し出したような瑠衣斗に、顔がひきつる。
この後、また2人きりになるのかと思うと、少し恐ろしい。
「るぅちゃんかーわいっ♪ホント分かり易いんだから〜!!」
「うん、やっぱりるぅはそうでなくちゃだな」
「お前ら…夫婦になってから益々似てきたな」
嫌味を言ったはずの瑠衣斗の言葉さえも、美春と俊ちゃんは笑顔でかわす。
そんな様子に思わず笑ってしまうと、目を細めて見下ろしてくる瑠衣斗とバッチリと目が合い、慌てて目を逸らした。
「もも、るぅに当たられたら慶兄の所に逃げろな〜」
「う……うふふ」
宗太の言葉に危うく頷きそうになり、無理に誤魔化してみたがやっぱり瑠衣斗に睨まれてしまった。
そんな私と瑠衣斗を、みんなが穏やかに笑っていた。