いちごいちえ
「るぅちゃん♪頑張って☆」
「ぎゃはははー!!おい、俊と宗太、賭けしようぜ賭け!!」
「じゃー俺、できない方にガソリン満タン」
「俊ができない方なら〜俺はヤる方にガソリン満タン」
「じゃあ俺は〜…あ、慶兄もやる?おじさんとおばさんも!!」
「美春もやるやる〜っ!!」
玄関先で、しかも玄関を開けたまま、にぎやかな声が先ほどからだだ漏れで、廊下に声が響きっぱなしだ。
……止めていただけないだろうか…。
人のアレコレで賭けをするの……。
「お前ら近所迷惑だ!!さっさと帰れ!!」
「お。るぅが邪魔だから帰れって」
「だからちげぇ〜!!もう帰れ!!」
なんだろう。この上手く回るサイクル。
素直に乗せられちゃうあたり、るぅって相変わらず単純で分かり易いよね…。
瑠衣斗が怒りながらも、玄関からみんなを押して追い出す。
そんな瑠衣斗とは対照的に、笑顔で手を振るみんなに、私は苦笑いしながら手を振り返した。
おじさん達が本当に賭けに参加するかは分からないが、その賭けの内容が頭から離れそうにない。
最後の最後まで、姿が見えなくなるまで手を振り返してくれたみんなの笑顔は、なんだかとても楽しそうで仕方ない様子だった。
押し出すようにして瑠衣斗がみんなを出してしまうと、玄関を勢い良く閉めて鍵までしてしまう。
ガシャンと言う音と共に、肩を落とした瑠衣斗が、吐き出した大きな溜め息がやたらと響く。
「あいつら…一体何が目的なんだ…」
「だ…だねぇ…?」
一気に静かになり、おまけにももちゃんまで居ない。
私と瑠衣斗の気配しかしない空間に、おかしな気まずさで一杯になったような気がした。
振り返って目が合った瑠衣斗にさえも、ぎこちなく口元を吊り上げる事でしか、自然には笑えなかった。
……誰…こんな雰囲気にしたのは……。