いちごいちえ




気にしなくていいって…るぅが全く気にしてないんじゃ……。


呆気にとられる私を余所に、瑠衣斗が私の手を取る。


いたずらっ子のような笑顔が、今は小悪魔に見えて仕方ない。



「む…っ、無理!!は、恥ずかしすぎる!!」



「なんで?もう一緒に入った事あるし……」



「じょっ、状況が違いすぎるでしょう!?」



必死に訴える私を、手を引いてソファーに座らせてしまうと、瑠衣斗がお湯を張りにキッチンにあるスイッチを押しに向かう。



るぅは笑って言うけど、私は一切笑えないんだよっ。




ピッと言う音と共に、流れてくるアナウンス。


そんな音を背後に、瑠衣斗が笑顔で私の元へと帰ってくる。



「ちゃんと綺麗に、全身くまなく洗ってやるよ」



「全身…っ!?だ、だから…そーゆう事じゃなくてね」



「俺は一緒に入りたいのに」




ドッカリと私の隣に身を沈めると、その反動で瑠衣斗の方へと体が傾く。


よろける私を瑠衣斗が引き寄せ、胸に頬を押し付ける形になってしまう。


顔が一気に熱くなり、胸がドキドキと激しく高鳴る。


ふいに、龍雅と宗太が押し掛けて来るまでの事を思い出し、更に恥ずかしさで冷や汗までが吹き出してきた。



覚悟を決めたはずなのに、やっぱりどこかでその決意が鈍る。


この先の事を考えると、私はどうしても逃げ出したくなってしまうんだ。



「大丈夫。そんな無理にイキナリ風呂で襲ったりしない」



「う…うん」



「ちょっとずつ、俺に慣れて?」



優しい声音に、ゆっくりと顔を上げる。


そっと私の髪を撫でいる瑠衣斗が、そんな私に優しく微笑んだ。
< 208 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop