いちごいちえ
気にしなくていいって…るぅが全く気にしてないんじゃ……。
呆気にとられる私を余所に、瑠衣斗が私の手を取る。
いたずらっ子のような笑顔が、今は小悪魔に見えて仕方ない。
「む…っ、無理!!は、恥ずかしすぎる!!」
「なんで?もう一緒に入った事あるし……」
「じょっ、状況が違いすぎるでしょう!?」
必死に訴える私を、手を引いてソファーに座らせてしまうと、瑠衣斗がお湯を張りにキッチンにあるスイッチを押しに向かう。
るぅは笑って言うけど、私は一切笑えないんだよっ。
ピッと言う音と共に、流れてくるアナウンス。
そんな音を背後に、瑠衣斗が笑顔で私の元へと帰ってくる。
「ちゃんと綺麗に、全身くまなく洗ってやるよ」
「全身…っ!?だ、だから…そーゆう事じゃなくてね」
「俺は一緒に入りたいのに」
ドッカリと私の隣に身を沈めると、その反動で瑠衣斗の方へと体が傾く。
よろける私を瑠衣斗が引き寄せ、胸に頬を押し付ける形になってしまう。
顔が一気に熱くなり、胸がドキドキと激しく高鳴る。
ふいに、龍雅と宗太が押し掛けて来るまでの事を思い出し、更に恥ずかしさで冷や汗までが吹き出してきた。
覚悟を決めたはずなのに、やっぱりどこかでその決意が鈍る。
この先の事を考えると、私はどうしても逃げ出したくなってしまうんだ。
「大丈夫。そんな無理にイキナリ風呂で襲ったりしない」
「う…うん」
「ちょっとずつ、俺に慣れて?」
優しい声音に、ゆっくりと顔を上げる。
そっと私の髪を撫でいる瑠衣斗が、そんな私に優しく微笑んだ。